New Balance M576をカスタム修理してみた
もともとは陸上競技用シューズメーカーとしてスタートしたニューバランスですが、今はファッションアイコンとしての側面が大きくクローズアップされていますね。イギリスのグレンソンとコラボした「576GRB」というのも今年発売されました。
「M576」や「M966」などモデル名を表す数字ですが、その靴が元々どういう用途に向けて作られたのかを表していて、例えばこの「M576」をはじめとした500番台は主にトレイルランニング用にデザインされています。
こちらは私物のスニーカーなのですが、汚れを落とすためクリーニングして気付きました。
ミッドソールの「ENCAP」とマークされているベージュっぽい色のパーツが劣化しています。このパーツはポリウレタン素材なので、「加水分解」してしまいました。加水分解してしまった靴をお持ちになられるお客様がよく「他は何ともなってないのに」とおっしゃいます。確かにそう、とはいえ合成皮革が使用されているパーツは表面が剥がれているし、側面のブランドロゴ「N」マークのリフレクターも寿命は長くなさそう。
踵の「スタビライザー」にもヒビがはいっています。こちらは「TPU」という素材で、TPUの「U」はウレタンのことなので、劣化してしまいます。
このままではもう履けなくなりそうなので、以下「修理してみた」です。
NIKE iDよろしくデザイン変えます。
今回修理するのはオレンジ色にしたパーツ、「スタビライザー」と「(PU:ポリウレタン)ミッドソール」。合成皮革の箇所はまあええか。
カカトの内側の「腰裏」という部分は最初はライトグレーの布地でしたが、ずっと前にやぶれたので黒い革で修理済みです。
こちらのように、スニーカーでもソール全部を交換する修理は承ることがあるのですが、ミッドソールだけというのは初めての試みなので若干気が重い。
まずはアッパーとソールを丁寧にはがします。劣化しているとはいえしっかりと接着されているのではがすのは大変です。ミッドソールにスリットが入っていますが、これは屈曲性をよくするために、ソールに厚みのあるスポーツシューズにはたいてい入っています。
「スタビライザー」をつくります。HenderScheme(エンダースキーマ)の靴をイメージして、3ミリぐらいの厚い革で加工します。写真右側は「ステッチンググルーバー」という工具です。革に溝を掘り、ステッチをかけるために使用します。
本来はこういう使い方をする使用頻度の高い工具です。
「スタビライザー」完成。それっぽくなりました。
ミッドソールをつくります。写真の下の黒いのがアウトソール、写真上の左が劣化したウレタン部分を削り落としたEVA(イーブイエー)素材のミッドソール、写真の上右側が新しいEVA。EVAというのはスポンジみたいな素材です。ウレタンもスポンジみたいなのでなかなか区別は難しいです。これらを接着剤が効きやすいように下処理をしてから接着します。
接着しました。おなじように写真の上の黒いEVAスポンジを下処理して接着します。
また接着しました。おなじように写真の上のライトグレー色のEVAスポンジを下処理して接着。単調な作業が続きます。
アッパーとの接着面に合うように加工していきます。
こんなかんじでアッパーとミッドソールの接着面はお椀形状に加工します。木型(LAST:ラスト)がないので慎重に大きさが合うか見極めます。
形が出来てきたのでこの辺からはやっと楽しくなってきました。
高さもOKです。
ミッドソール両足完成しました。あとはアッパーと接着するだけ。接着するだけですが、ちょっとでもずれたら台無しなので集中して慎重に。
そして完成。
全く別物になりました。賛ですか?否ですか?自分が決めたのでこのデザインは気に入っているのですが、どうなんでしょう。
履いてみての感想は、まず履き心地が変わりました。使用したEVAが柔らかいので、フワフワしています。1300シリーズを履いたラルフローレンが「雲の上を歩いているようだ」と絶賛したという話は有名ですが、これを履いたら何と言うでしょう。
こんな記事を載せておいてなんですが、、
New Balanceではフラッグシップモデルに関してはソールの交換がオリジナルの材料で可能なようです。この労力を考えると、非常にお値打ち価格です。
長々と最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
なんば店
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